「ウィリアム・モリス」デザインのひみつ

インテリア雑誌や展覧会にたびたび登場する「ウィリアム・モリス」

今から185年前にイギリスの裕福な家に生まれ、制作された壁紙とファブリックのデザインが有名で今も人気があります。

当店でも取扱いがあり、施工例やこのブログでも多く取り上げています。

今回、そのデザインのひみつを紐解き、解説します。

先ず、モリスは、アートのさまざまな領域、ステンドグラス・装丁・刺繍・家具にも才能を発揮したマルチな人間で、

さらに詩人・思想家として、社会主義運動の活動や私生活でも波乱万丈の人生をおくり、あまりにも多面的で複雑であったと言われる。

デザイナーとしてのモリスの才能が最も発揮した分野が、先ほど述べた壁紙とファブリックのデザイン。

そのデザインのモチーフとなったのが、主に身の回りの自然や庭や野に咲く草花です。

自然を愛し素朴な田園への憧れを持ったモリスが、その美しさに惹かれていったからでしょう。

モリスらが珠玉の建築として建てた「レッドハウス」は、
共に広がる庭園、そこには様々な美しい草花で彩られ、モリスファンの聖地として今も残っています。

レッドハウス

生活に必要なものこそ美しくあるべきと唱えたモリスが、

生活の細部に至るまで薫り高い芸術で満たす事を夢見て、彼が追求・表現したデザインは何か。

それは、それまでの19世紀の装飾の流れである自然主義・リアリズムから、
写実的な描写でなく、それでいて抽象化して自然を失う事のないデザイン

「自然を形式化したパターン」であった。

モリス最初の壁紙デザインである「トレリス」で説明します。
トレリスのパターン(図柄)

トレリス引用 Morris&Co

格子垣に生えるバラと小鳥、小鳥は虫を狙っている様子
「レッドハウス」にあったバラの格子垣にヒントを得て制作されたと言われている。
格子にバラの枝が前後に絡まる様を、平面のなかに立体的で生き生きとしたデザインとなって仕上げています。

このパターン(図柄)がリピート(繰り返す)され、一つのデザインとして成立します。

トレリス

よく見ていただくと、小鳥が、隣り合うパターン(図柄)に居る虫を、狙っているデザインになっているのです。
ただパターン(図柄)が繰り返すのでなく、リピート(繰り返す)しても意味を成すように計算しています。

こうすることで、広がりを生み、自然の美しさを放って見えてきます。

トレリス

説明を繰り返しますが、写実的な描写でなく、それでいて抽象化して自然を失う事のないデザイン
「自然を形式化したパターン」が、モリスのデザインのひみつなのです。

他のデザインでも紹介

先ほどの「トレリス」と「ヒナギク」を含めた、初期3部作の1つ
「果実あるいはざくろ」

フルーツ引用 Morris&Co

斜めにのびる枝が枠組みをつくり、地紋と図柄の2層のデザインとなっています。
極端な写実描写でもなく、極端な規則性でもない、見やすいデザインでありながら、いきいきとした自然の魅力を感じます。

「ウィローボウ」

ウィローボウ引用 Morris&Co

生い茂る柳の枝が川面に映り揺れる美しい様子を描いた、モリス大人気柄
シンプルに見えてどこがパターンの繰り返しつなぎ目なのかわからない、考え抜かれた秀逸パターン

「アカンサス」

アカンサス引用 Morris&Co

アカンサスという古典的な植物文様がダイナミックに全面に埋め尽くし、うねっているデザイン
複雑で重厚な、これもモリスの代表する柄です。

鮮やかな装飾感を見せてくれ、現代においてもういういさを失うことない感性が魅力となって、今も人気となっています。

ちょうど、モリスが目指した美しい生活を求めてという副題の付いた展覧会「ウィリアム・モリスと英国の壁紙展」が、
名古屋 松坂屋美術館で開催されています。

展覧会では、サンダーソン社(英)が所蔵する貴重な版木、モリス及び英国壁紙の展示、デザインの変遷を辿る内容。

会場内に、壁紙とファブリックを使って室内イメージが設えていて、
モリスのデザインをニュートラルカラーで表現した新ブランド「PURE MORRIS」も登場していました。

ピュアモリス

1892年発表のデザインの縮尺を拡大しフレスコ画風に仕上げた壁紙「BACHELORS BUTTON」

モリス展

クラシックでありながらモダンな雰囲気をまとっていました。

2月17日(日)までとなっています。

場所:松坂屋美術館 松坂屋名古屋店 南館7階
会期:1月2日(水)~2月17日(日)

「ウィリアム・モリスと英国の壁紙展」